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COLUMN先物コラム

とうもろこし価格上昇場面でも気を付けておきたいこと

更新日:2017/04/06

 シカゴとうもろこし市場では3月31日に大幅反発場面を演じました。この日の取引を中心限月の5月限は358セントで開始したうえ、一時は355セントにまで値を下げる場面が見られたものの、終値は364.25セントとなっています。前日の終値に比べて6.75セントの上げ幅を記録したのです。

 その後もとうもろこし価格の上昇は続き、週明けとなった現地4月3日の取引では、3月20日の取引以来、初めてとなる370セント超えも示現しました。

 このようにとうもろこし価格が上昇しているのは、3月31日に発表された米国農務省(USDA)の作付意向が強気材料視されたことが背景となっています。今回の報告においてUSDAは、今春のとうもろこし作付け意向面積を前年実績の9,400万エーカー、そして事前予測の平均である9,103万エーカーを共に下回る9,000万エーカーとの見通しを示しました。

 事前から大豆価格との価格比から、今春米国ではとうもろこしよりも大豆の作付け意欲が高まる可能性が見込まれていました。しかしながら、発表された作付意向を受けて、これまで予想されていた以上にとうもろこしの作付面積が縮小する可能性が示されたことがサプライズとなって受け止められているのです。

 とはいえ、この報告を受けてのとうもろこし価格の上昇期間も長くはないように思われます。というのも、とうもろこしの需給に関しては、依然として潤沢感が強く、これが重石になってくると考えられるからです。

【米とうもろこし四半期在庫は前年同期比10%以上の増加】
 同じく現地3月31日に発表された四半期在庫報告において、米国の3月1日時点のとうもろこし在庫量は前年同時期を10.15%と大幅に上回る86億1,624万3,000ブッシェルでした。

 ただ、この四半期在庫報告に関してとうもろこし市場では強く意識されていません。というのも、この弱気な報告も、今春の作付意向面積が予想よりも縮小した、という強気な要因によって相殺されていることが背景となっているのでしょう。

 ちなみに、作付け以降の発表によって大きく地合いを崩したうえ、その後も続落場面を演じた大豆の場合はとうもろこしの状況と異なります。

 同時に発表された同日の大豆在庫量が前年同時期を13.31%上回る17億3,467万5,000ブッシェルでした。大豆の場合、この弱気な報告に加えて、今春の作意向面積は前年度に比べて7.25%拡大した8,948万2,000エーカーとなるばかりか、この作付意向が実現すれば過去最大の作付面積に達するとの見通しが示されています。

 このように在庫の増加と作付の拡大見通しという弱材料が同時に発表されたことが、大豆市場に大きな影響を与えたことが大豆価格が下値を探る足取りを展開する背景となっていると思われます。

 とはいえ、とうもろこし市場の強い足取りも息が長いとは見られません。なぜならば、やはり需要の弱さが市場の重石になってくると考えられるからです。

【17年の作付け面積減少も過去5位の作付け面積】
 前述のようにUSDA発表の作付意向によると、とうもろこしの今春の作付面積は9,000万エーカーとなっています。これは、16~17年度に記録した9,400万エーカーは下回るものの、過去の作付面積との比較で見ると、過去第5位の作付面積に当たることになります。

 また、近年の動向からすると、よほどの悪天候が長引かない限り、とうもろこしのイールドは170ブッシェル前後を達成する可能性が高いと見られます。このイールドと作付意向を基にして生産量を予測すると、140億ブッシェルを超えてくる見通しとなることが分かります。

 仮に生産量を140億ブッシェルと仮定したうえで、16~17年度からの繰り越し在庫を含めると、17~18年度の米国内とうもろこしの総供給量は151億4,800万ブッシェルの大豊作を記録した16~17年度の169億4,000万ブッシェルに次ぐ供給量、163億2,000万ブッシェルを記録すると見られるます。

 この供給量を消化するために需要がどの程度の伸びを見せるか、という点がとうもろこし市場の課題です。16~17年度のとうもろこし需要は前年度の136億6,400万ブッシェルから146億2,000万ブッシェルへと大幅な伸びを見せています。

 しかしながら、これは大豊作により今年度のとうもろこし平均価格が前年度の361セントに対し321~360セントへと下落したことを受けて需要が刺激された結果と見られます。

 そのため、とうもろこし価格が上昇するようであれば需要の伸びも限られることになり、期末在庫量が再び20億ブッシェルを超えてくる可能性も十分に残されていると考えられます。

 特に、16~17年度に関しては、昨年、アルゼンチン、ブラジルが天候不良に見舞われた結果、両国でのとうもろこし生産量が大きく落ち込む一方、米国産とうもろこしの輸出用需要が大幅に増加していましたが、17~18年度に関しては両国ともに大豊作が見込まれると同時に両国からの輸出も活発化する可能性が高い、というように南米諸国の状況にも変化が生じています。

 作付面積が縮小するなか、米国で夏場の重要な時期に長期的な干ばつに見舞われて、その結果として不作に陥る可能性が高まるなどの状況が発生すれば、上値波乱となる可能性もあります。

 しかしながら、大豊作となった前年度からの繰り越し在庫量、南米諸国との競争により頭打ちになる可能性が高い米国の輸出、といった事情は、米国内とうもろこし需給が引き締まるためには、まだ高いハードルが存在していることを示しています。これから米国は天候相場期を迎えます。

 作付面積の縮小が予測されているため天候に対する反応は例年以上になるかもしれません。とはいえ、米国での不作見通しが強まらない限り、とうもろこしの需給は価格の上昇を長期に渡って支えるほど強気ではないことが、今後の重石になってくるのではないでしょうか。

執筆者:平山 順氏(ひらやま・じゅん)

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)みんかぶに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

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