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COLUMN先物コラム

長期低迷の様相が強まる大豆市場

更新日:2017/04/20

 シカゴ大豆市場では頭重い足取りが続いています。シカゴ大豆市場では、現地1月18日の取引において中心限月が1,080セントにトライする動きも見られ、その後も下落する場面が見られながらも1,000セント前後を維持する底固さの感じられる動きが続いていました。

 しかしながら、3月下旬までは1,000セント台を維持したとものの、その後は下値追い場面を演じ、現地4月11日の取引では940セントを割り込む場面も見られました。

 今週に入ってから戻す場面が見られていますが、それでも960セント前後が上値抵抗になって反落に転じるなど、上昇に対する抵抗の強さを窺わせる足取りとなっているのです。

 このように大豆市場が圧迫感の強い足取りを演じるきっかけとなったのが、3月末に発表された米国農務省(USDA)による作付意向でした。

 毎年3月末に発表されるUSDAの作付意向は、その年の穀物の生産量を予測するうえで重要視される報告です。今年の場合、大豆ととうもろこしの値開きから割高感の強い大豆の作付意欲が高まることは事前に見込まれていました。

 とはいえ、2017年の作付見通しを前年度の8,343万3,000エーカーを大幅に上回る8,948万2,000エーカーとの見通しをUSDAが示したことは、市場にとってはサプライズ視されました。

 さらに、同日に発表された四半期在庫において、3月31日時点の米国の大豆在庫は17億3,467万5,000ブッシェルで、前年同時期を13.31%と大幅に上回っていたことが、米国産大豆に対する需要の停滞感を強めたことも、市場にとっての弱材料となったのです。

 米国内の弱気な需給見通しが大豆価格を昨年11月下旬以降、維持していた1,000セント台という価格水準から押し下げるきっかけになりましたが、これに追い打ちをかけているのが、同じくUSDAが発表した需給報告です。

 現地4月11日に発表された需給報告において、16~17年度の米国内の大豆供給量は前月と同量の45億2,8900万バレルに据え置かれる一方、需要量は前月予測の40億9,300万ブッシェルから40億8,300万ブッシェルへと引き下げられ、その結果、期末在庫率は前月予測の10.6%から10.9%へとわずかながら引き上げられました。

 しかしながら、大豆市場に大きく影響を与えたのは米国内の需給見通しだけではありません。今回の報告で大豆市場にとって大きな影響を与えることになったのは、すでに豊作が予測されていたブラジル、アルゼンチンの生産量見通しがさらに引き上げられたことでしょう。

 今回の需給報告においてUSDAが発表した16~17年度の大豆生産量は、ブラジルが前月予測の1億800万トンから1億1,100万トンへ、アルゼンチンが前月予測の5,550万トンから5,600万トンへと引き上げられました。

 さらに、南米第3位の大豆生産国であるパラグアイの生産量も前月予測の917万トンから1,010万トンへと上方修正されています。ちなみに、これら3か国の生産量引上げ幅は443万トンに達しています。

 生産量が引き上げられたことは、これら3か国の供給量が拡大したことを意味しますが、実際にUSDAはブラジル、パラグアイに関しては輸出量も引き上げました。

 具体的には、ブラジルの輸出量は前月予測の6,100万トンから6,190万トンへ、そしてパラグアイの輸出量は前月予測の540万トンから620万トンへと修正されています。つまり、この2か国だけで170万トンの輸出量の引き上げが行われたことになるわけです。

 これに対し、世界の需要は前月からわずか72万トンの引き上げにとどまっているため、世界的にも需給の緩和が進むことが予想されるわけですが、このような世界需給の緩和は、米国の大豆輸出が伸び悩む可能性を高める要因になると考えられるのです。

 つまり、17~18年度の米国の大豆需給は、16~17年度における米国内外の供給拡大が圧迫要因になると見込まれるにもかかわらず、とうもろこしとの価格比から生産が積極的に行われる結果、順調に生育が進行するようであれば供給に潤沢感が強い状態が続く可能性が高い、と予想されるのです。

 当然、穀物の生産は天候に大きく影響を受けるため、米国内の大豆需給が必ずしも緩和傾向を維持するとは限りません。特に天候相場期を迎えていることから、今後は天候に対する警戒感から売りが控えられる状態が続くでしょう。

 しかしながら、米国、ブラジル、アルゼンチンといった主要生産国において特定の時期に生産される主要穀物が大豆、とうもろこし、小麦、の3種類に集中している以上、利潤性の高いものに生産が集中する傾向が強まることは避けられません。

 また、この傾向は特定の穀物の需給緩和を促すという流れも作り出しており、今年はそれが大豆に当たると考えられます。利潤性の高まりを追及するなかで限定された穀物に生産が集中するという傾向が強まっており、その年の生育シーズンを終えるまでは天候に異変がない限り、価格の低迷が促されるというパターンが繰り返されることになりそうです。

執筆者:平山 順氏(ひらやま・じゅん)

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)みんかぶに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

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