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COLUMN先物コラム

ブラジル、乾燥継続で本当に懸念されることとは

更新日:2017/09/28

 9月も下旬を迎えるなか、米国のコーンベルトでは早くも大豆収穫が開始されています。米農務省(USDA)によると9月24日時点の大豆収穫率は10%となっています。これは平年の12%を下回るものの、前年同期の9%は上回っているため、特に懸念すべき問題のないペースで収穫が進行していると言えるでしょう。

 収穫開始は天候相場期が終了に向かうと同時に、需給相場期に移行しつつある時期を迎えていることを意味します。それと同時に市場の関心は北半球の需給見通しそして南半球での生育状況にシフトしていくことになります。

 特に、17/18年度も1億トンを超える生産量が見込まれると同時に米国の6124万トンを上回る6400万トンの年間輸出が予測されているブラジルの生育状況はこれからの時期における供給面での最大のポイントでしょう。

 そのブラジルでの大豆生育ですが、年間を通してどのようなペースで進行していくかを確認してみましょう。

 まず、作付期を迎える9月は10日前後でパラナ州で、その後、半ばにはマトグロッソなどブラジル中部に位置する産地での作付が開始されます。また、この時期は平年であれば、雨が降り始めると同時に気温も上昇し始めます。

 続く10月はブラジル中部では大豆作付の最盛期を迎えます。この頃、通常であれば1週間に1~2日、雨となり、気温も夏に向けて上昇します。

 11月に入れば早播大豆の開花が始まり、月末までにはほぼすべての地域が開花期入りをする一方、北東部では作付が開始されます。また、リオグランデドスル州では小麦の収穫が開始され、収穫作業が終了するに伴い後播種大豆の作付が開始されます。このころは雨量が増加し、1週間のうち3~4日間は雨が降り続く傾向があります。

 12月には早播大豆は開花期~着サヤ、成熟期を迎え、早ければマトグロッソ州やパラナ州では大豆の収穫が開始されます。また、後播種大豆の作付はこの月中に終了する必要があります。なお、この時期は雨が降り続くほか、気温が上昇する高温多湿の状態となります。

 1月に入ればブラジル中部での大豆収穫が開始され、収穫された大豆が国内の業者へと出荷され、早ければ1月末までには新穀物年度初めての大豆輸出も行われます。大豆が収穫された後には、二毛作目のコーンの作付が開始されるため、大豆の収穫が遅れるか否かでコーンの作付状況も決定されることになります。

 ただ、この時期は雨季の最盛期で、1日に2~3回ほど雨となるほか、気温もかなり上昇する高温多湿の状態が続く傾向があります。

 この時期を経て2月に入れば大豆は結実期の最盛期を迎えることになり、ブラジル中部での大豆収穫も本格化する時期となります。大豆の収穫の最盛期は3月も続くことになりますが、同時にコーンも収穫の最盛期を迎えているため、穀物輸出港は大変な混雑状態に見舞われることになります。

 なお、3月は雨期の終盤であり、3月末にかけて次第に乾燥した天気が広がる傾向があります。そのため、この時期に雨が降り続くようであれば収穫遅れとこれに伴うカビの発生や作柄の悪化懸念が強まることになります。

 その後、4月から大豆の輸出ペースが加速し、5月以降は8月末まで大豆の輸出最盛期を迎えることになります。ただ、この頃にはインフラ不足が原因でトラックが長蛇の列を形成したり、トラックの運送業者によるストとこれに伴う穀物輸出の停滞が懸念される時期でもあります。

 ブラジルの大豆生育および輸出を1年を通して見ると、このような流れにあります。そのため、目先の注目ポイントとしては10月半ばには最盛期を迎える大豆の作付状況でしょう。

 それでは今年のブラジルの作付状況はどのようになっているかというと、マトグロッソドスル、パラナ、マトグロッソという主要産地において乾燥した天気が続いた結果、作付に遅れが生じる可能性が高まっているのです。

 10月初旬には雨となり、乾燥した状況が緩和に向かうことが予測されているほか、ブラジルでは1月にかけて雨季の最盛期を迎えると同時に気温が上昇する傾向があるため、乾燥によって大豆の作付賀遅れた場合でも、それがイールドの低下につながる可能性は抑えられることが考えられます。

 それでは大豆の作付遅れが同国の穀物生育に与える影響は軽微にとどまるのか、というとそれも異なります。というのも、上述の年間の穀物生育サイクルで確認できるように、ブラジルでは多毛作で穀物が生産されているため、大豆の作付が遅れれば大豆の収穫後に作付される多毛作コーンが影響を受けざるを得ない、という状況に陥ることになるからです。

 大豆の後に作付される二期作目のコーンはサフリーニャと呼ばれますが、このサフリーニャコーンの場合、雨季の終盤と作付期が重なっている影響から作付が遅れると土壌水分不足に見舞われるリスクが高まり、これに伴ってイールドの低下を余儀なくされることになるのです。

 近年、ブラジルでは二期作目のコーン作付面積が拡大しているため、16/17年度の場合、ブラジル国内コーン生産量は9850万トンに達しましたが、そのうちの3分の2は二期作目、つまりサフリーニャコーンが占めています。

 現在、9月からの乾燥した天候がブラジルの大豆生産に与える影響が懸念され、ブラジルの天気次第で大豆市場の価格が一喜一憂する場面が見られています。しかしながら、気を付けておきたいのは、この乾燥した天候がより深刻な影響を与えるのは、大豆生産量よりもサフリーニャコーン生産量の方、という点です。

 そのため、さらに乾燥が続くようであれば今後、同国のコーン生産量予測が下方修正されるリスクが高まると同時に、これに伴いコーン需給引き締まり観測が高まる可能性が強まることにもなりかねません。

 ブラジルは世界最大の大豆輸出国であるが故に、乾燥した天気に対する反応は大豆市場で見られていますが、その天候が実際の生産量に影響を与えるのはコーンの方であり、それだけにコーン市場においてもブラジルの天候を意識する必要があると思われます。

執筆者:平山 順氏(ひらやま・じゅん)

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)みんかぶに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

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