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COLUMN先物コラム

金市場ではリスク回避の買いを解消する動きが続くも弱気視出来ない理由

更新日:2017/04/27

NY金市場では、1,300ドルを目指す足取りを見せていた現地4月18日の取引とは一転し、下値を探る足取りが展開されています。

特に週明けとなる4月24日以降には下げ足を強めており、現地25日の取引において中心限月である6月限は前日比で10.3ドルと10ドルを超える下げ幅を記録して1,267.2ドルで引けました。翌26日は1260.7ドルまで下落し、押し目底を模索の展開となりました。

NY金市場において終値が1,270ドルを割り込むのは、現地4月11日の取引以降、初めてのことになります。

【フランス大統領選挙。朝鮮人民軍創設記念日を無事終え、金市場から資金流出】
このようにNY金が下値を追う足取りを演じているのは、リスク回避のために集まってきた資金が流出する動きが背景になっていると見られます。というのも、現地4月23日に開催されたフランス大統領選の第一回投票、4月25日の朝鮮人民軍創設記念日を無事に終えたことでリスクを警戒する動きが和らいでいるからです。

まず、フランス大統領選の第一回の投票結果に関しては、中道系独立候補のマクロン前経済相と、極右政党・国民戦線のルペン党首が現地5月7日に行われる決選投票を迎える見通しとなりました。

これは事前の世論調査通りの内容だったことに加え、ロイター社が伝えたところによると、決選投票に関するイプソス/ソプラ・ステリアの世論調査では、マクロン氏が62%得票し、ルペン氏(38%)を破ると予想されている。

これらの結果を受けて、極右政党のルペン氏が大統領になる可能性が低いとの見方が広がっていることが、安堵感を強めています。

金市場では、昨年にイギリスでのEU離脱派勝利、米国でのトランプ大統領の誕生、という予想外の出来事を経験していたことから、フラン大統領選でも不測の事態を見込んだうえで、逃避買いが広がっていました。
とはいえ、実際の第一回の投票の結果はフランス大統領選が予想通りの結果となっており、これが安堵感を強めると同時に、資金流出の動きを促しています。

さらに、トランプ新政権は空母カール・ビンソンを朝鮮半島近海へ向けて航行するよう指示したことに加え、海上自衛隊と共同訓練を開始するなど、北朝鮮との緊張が高まるなか、4月25日には朝鮮人民軍創設記念日を迎える北朝鮮がミサイルを発射するとの見方が浮上していました。

この予想に反し、北朝鮮がミサイルを発射することなくこの日を終えたことで、リスク回避の買いを求めて金に集まっていた資金の流出となりました。

とはいえ、注意をしたいのはこれで完全にリスクが払しょくされたわけではない点です。北朝鮮は今回の祝日でこそミサイルを発射しませんでしたが、米国との緊張の高まりは明らかであり、今後、北朝鮮が祝日を迎えるたびに同国のミサイル発射の可能性が警戒される状態が続くことが見込まれます。
また、フランス大統領選に関しても、今のところルペン氏が大統領になる可能性は低いと見られているとはいえ、フランスで再びテロが発生すれば大統領選に影響する可能性もあるうえ、治安の悪化は地政学リスクに対する警戒感をより一層高めることになります。

さらに、米国に関してもシリア空爆を実施したほか、北朝鮮に対しても積極的な姿勢を見せていることが地政学リスクを高める一因となっていることに加え、米国内の政治情勢に関してもオバマケアに代わる代替案の採択を中止したことをきっかけにして、トランプ政権のかじ取りに対する警戒感も根強く見られます。

フランス大統領選、北朝鮮のミサイル発射を無難に乗り越えたことが、安全な投資先として金に対する需要が後退している状態にありますが、地政学リスクやフランス大統領選に絡む不測の事態発生の可能性、さらにはトランプリスクが解消されたわけではありません。

【現在の水準では金の投資意欲根強い】
世界最大の金の上場投資信託であるSPDR金ETFの残高は現地4月25日時点で854.25トンと僅かながら減少した状態にあります。しかしながら、3月10日には825.22トンまで減少していたことを考慮すると、現在の水準はまだ金に対する投資意欲が根強いと見受けられる水準と考えられます。

今後、金ETF残高が減少していくようであれば、金への投資意欲が後退していることが示唆され、これに伴って金価格も下押される可能性があります。しかしながら、前述のように金に対して安全な投資先を求める動きを刺激する要因は完全に払しょくされているわけではないため、今回の下値を追う足取りが本格的な基調の展開を示しているわけではない点に留意して置いた方が良さそうです。

執筆者:平山 順氏(ひらやま・じゅん)

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

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