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COLUMN先物コラム

コーン市場、9月需給報告のその先を考える

更新日:2017/09/14

 現地12日に米農務省(USDA)は最新の需給報告を発表しました。今回の報告が発表される以前には17/18年度の米国の生産量は140億3500万Buが見込まれていました。前月の見通しが141億5300万Buだったため、事前には生産量の下方修正が見込む向きが大部分を占めていたことになります。

 しかし実際に発表された生産量見通しは前月予測を上回る141億8400万Buで、事前の下方修正見通しとは全く異なる結果となりました。

 17/18年度の米国のコーン生産量は、初めて生産量見通しが示された5月発表分では140億6500万Buとの見通しが示されました。その後、7月の発表において142億5500万Buまで引き上げられた後に8月発表では141億5300万Buへと引き下げられたものの、今回の報告でわずかながら再び上方修正されたわけです。

 コーンベルトでは平年に遅れを見せているとはいえ、成熟率は21%に達しているため、よほどの天候不良がない限り米国の17/18年度の生産量が今後、大幅に修正される可能性は大幅に低下したと考えられるため、今回の発表の141億8400万Buという量が今後の需給相場において基準になってくると考えられます。

 特に9月も半ばを迎えてコーンベルトでの収穫本格化を目前に控えるなど、天候相場期もほぼ終え、需給相場期を迎えています。それだけに需給見通しに対する意識はよりいっそう強くなるものと思われ、生産量の上方修正という今回の需給報告の結果がしばらくの間、市場の重石になってくることが予想されます。

【南米生産国の天気に注意】
 ただ、同時に注意したいのが南米生産国の天気です。というのも、米国が需給相場入りするのと時期をほぼ同じくして南米諸国は天候相場期入りためです。注目されるのが、世界第2位、第3位のコーン輸出国であるブラジル、アルゼンチンの動向です。

 そのうちアルゼンチンの場合、この数年で輸出量を大幅に伸ばしてきていることもあり、今年度の輸出量にも伸びが見られるかどうかに関心が寄せられています。

 ちなみにUSDAのデータを基にここ数年のアルゼンチンのコーン輸出を振り返ってみると、14~15年度は1890万トンだった年間輸出量は16~17年度には2750万トンに達し、17~18年度にはさらに拡大して2850万トンを記録することが見込まれています。

 なお、アルゼンチンの年間コーン輸出量は11~12年度から14~15年度まで1700万トン台~1800万トン台での推移となっていました。そのため、年間輸出量はその後の3年間で約1000万トンもの増加を見せたことになります。

 大幅な輸出の大幅増加の背景となっているのが、マウリシオ・マクリ大統領による輸出関税引き下げ措置と為替制度を変動相場制へ移行することで通貨ペソの切り下げを実施しました。

 同大統領は2015年12月10日に大統領に就任した後、小麦、とうもろこし、ヒマワリ、ソルガム、食肉 そして大豆などの穀物輸出関税の撤廃又は引き下げに着手しました。これにより、とうもろこし輸出に関してはそれまで20%に設定されていた輸出関税は撤廃されています。

 この輸出関税の撤廃と同時に通貨ペソが切り下げられたことにより、アルゼンチンのコーン輸出は大きく飛躍することになったのです。

 また、この輸出関税引き下げは同国内のコーン生産意欲を刺激した結果、同国のコーン生産量は輸出関税撤廃前の15~16年度は2900万トンだったものの、輸出関税の撤廃が実施されたことを受けて翌年の16~17年度には4100万トンまで生産量は拡大したほか、17/18年度も4000万トンと高い水準での生産が続けられる見通しとなっています。

 このようにアルゼンチンはコーン輸出国として急激な成長を遂げているわけですが、ここで重要になってくるのが、現在作付初期段階を迎えている同国では、降雨過剰となっており、すでに作付を終えたコーンへの被害が懸念されて始めているという現状です。
 
 ブエノスアイレス州およびラパンパ州農牧連合会(CARBAP)が9月12日に明らかにしたところによると、アルゼンチン最大のコーン産地であるブエノスアイレス州では、産地のうち28%に当たる地域で土壌水分が過剰な状態になっています。

 16/17年度、同州のコーン生産量はアルゼンチン全体の約25%を占める主要生産州だけに、今後の同地の天候次第ではアルゼンチンのコーン生産量は予測を下回ってくる可能性が高まることになります。

 アルゼンチンのコーン生育初期段階では10月が最も重要な時期となります。それだけに、10月に入ってからも雨が降り続くようであれば同国のコーン生育に対する警戒感が強まることが見込まれます。

 主要生産並びに輸出国として成長したアルゼンチンの動向は米国の需給見通しにも変化を与える可能性が高いため、今回の需給報告が弱気な内容だったからといってコーン価格が必ずしも低迷し続けるわけではない点に注意が必要でしょう。

今後のハリケーンには依然として注意する必要はあります。ただ、米国自身が主要産油国へと転じ、また主要生産国へと転じるきっかけとなったシェールオイルは内陸での生産となることからハリケーンの影響を比較的受けにくいこと、さらには米国内の石油在庫が潤沢という現状を見る限り、ハリケーン襲来が原因となっての石油価格の高止まりは想定し辛いのが現状ではないでしょうか。

執筆者:平山 順氏(ひらやま・じゅん)

中央大学法学部卒、英国留学後
(株)日本先物情報ネットワークに入社。現在主任研究員。
商品全般に通じ特に穀物市場を得意とし、テクニカル分析には定評がある。
1999年にシリーズ3(米国先物オプション外務員資格)に合格。

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